本襖⑫  上張り

ついに、表具屋さんでの最後の仕事になりました。


仕上げの紙を張る 『上張り』 です。





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↑四方に、濃いノリをつけます。


袋張りのときノリは、ほんの少しでしたが、今度は多めに


タッタッと刷毛を豪快に動かしています。





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↑紙全体に、 『水ノリ』 と呼ばれる


ごく薄いノリをつけます。





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↑紙を張る前に、ノリがついていないか確認。


この作業を、『こげつき』 というそうです。



ノリがついているとその部分は、上張りの紙がポコっと


とびでて見栄えが悪いので、丁寧に確認します。


電気を消して見るのがコツ。






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↑水ノリまでした紙は、しばらく置いておきます。


くたくたになるまで。


紙をのばして、癖をとるためです。







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↑張ります







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↑張ったあとは、刷毛でなでます。




ノリで紙と紙がつくと、とても丈夫になります。


ここでは、よーくつくように刷毛で丹念になでて


接着させます。
























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by takahashi-tategu | 2012-12-26 17:26 | 職人の仕事 | Comments(0)

本襖⑪ 袋張り

べた張りの後は、


『袋張り』  です。



仕上げの襖紙の為の、下張りです。


今までは、骨を丈夫にする為の下張り。





↓ちょっ、ちょっ と 


ほんの少し、紙の端にノリをつけていきます。



四方、カネテにつけます。


このノリのつけ方を 『前敷(ぜんじき)』 と呼ぶそうです。


ずらしながら、つけるという意味。 


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↓張ります。


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↓良く見ると、折り返しています。

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表面の下張りの紙には、一切ノリがつきません。




ノリは、木(骨の小口)の部分につきます。



だから、正面から見た時、凹凸がなく、ふんわり1枚の紙が


ただ、のっているように見えます。





袋張りという言葉は知っていましたが、四方にノリをつけて張る


方法だと思っていました。


四方は、四方でも、表面にノリがつかないように、木の縁に張る


ということは初めて知りました。





こうすることで、襖の張替えするとき、正面のところにノリが残らず


何回張替しても、ボコボコにならずきれいなのだそうです。







袋張りのもう1つの大事なポイントは、


『紙と紙のつなぎめを、なるべく細くすること。』


と教えてもらいました。




一枚の大きな紙ではなくて、継ぎ足して張るのですが、


そこのつなぎ目のところです。






これは、凹凸が表面に出るのを防ぐためです。



ノリを、四方同じようにつけているように見えて、


『上口』 すなわち 紙のつなぎ目となるところは、


ノリの量を少なくしているそうです!





掛け軸など、もっと上等な仕上げのときは、


紙をさいて、その毛と毛をあわすように張るそうです。


それが一番、つなぎ目が目立たないとの事。


『くいさき継ぎ』  という手法。



その為には、毛が出るような紙を使わなくてはいけない。




これが、紙をさいてつなぎあわせたもの↓

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↓紙さいて、毛がでているところ


これをつなぐ時は、ちょうどだと、隙間があくそうです。

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ちなみに、内山和紙で障子を張るようなとき、


あえて、つなぎ目を意匠として見せるのに


『棒つなぎ』 として、線が出るようにするそうです。



つなぎ目が太いと、見栄えが悪いので、


まっすぐ細くきれいに継ぐそうです。





このつなぎ目については、お茶室に障子を入れる時、


いつも話題になります。



桟と桟の中心に、上下が千鳥(交互)になるようにする、とか


あえて、桟の中心からずらす、など、そこの家のやり方で


違います。






↓袋張りが終わったところ


線が見えるのは、紙の折れ目。


霧吹きするときれいにとれるそうです。

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by takahashi-tategu | 2012-12-12 11:33 | 職人の仕事 | Comments(0)

本襖⑩ ハケの種類

べた張りの作業をしている時、ハケについて沢山


教えてもらいました。 






べた張りの、つきなでる作業をするハケを、


 『打刷毛(うちはけ)』 


下の写真の黒い毛のもの。


シュロの毛でできていて、触ると硬いです。

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前の白っぽいものは、『撫刷毛(なではけ)』


羊毛でできていて、とても柔らかい。 







毛の種類は、 シュロ、羊毛の他に、鹿、馬があるそうです。




相馬表具屋さんが面白い話を教えてくれました。


馬の毛のハケのことを、熊毛と書いてあるそうです。




熊の毛ではないのになぜ?




昔、馬のことを駒といって、それがいつのまにかクマに


なって、馬毛のハケを熊毛とカタログに書くようになった


そうです。








ハケの形についても教えてもらいました。



写真の角が丸まっているのが、 『京ハケ』


三角になっているのが、『江戸ハケ』  


だそうです。









正吾君が作業いるとき、後ろから他の仕事をして


見ていないのに、お父さんの相馬さんが、


『おい、ノリが濃いんじゃないか?』  と言っていて


びっくりしました。





見ていないのに、何故わかるんですか?


と聞いたら、 『ハケの音』  でわかるのだそうです。




すごいですね! 






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by takahashi-tategu | 2012-12-12 10:37 | 職人の仕事 | Comments(0)

本襖⑨ べた張り

三枚蓑をかけた後の作業は、


『べた張り』 です。


ノリを全面につけた紙(クワチリ)を、蓑をかけた上に張る作業です。



蓑紙の上に張ることから、『蓑押え(みのおさえ)』 とも呼びます。


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↓全面にまんべんなくノリをつけて


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↓張っていきます。


下にペラペラの固定されていない薄い紙が3枚も


あるのに、こともなげに、さっさっと平らに張っていきます。


すごいですね。



(すごい、すごいと言っていると、正吾君が、クワチリ紙にノ


リをつける方が難しいよ、と教えてくれました。


まんべんなく薄く、しかも、はげないようにノリをつけるのは


慣れが必要だそうです。)


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この張る作業、


ハケで 『つきなでる』 ようにします。



『つきなでる』 とは、 ハケで、つっつきながらなでる


という意味です。



確かによーく見ていると、ハケでトントンとつっきながら、


張っています。  このハケを『打ちハケ』 といいます。









↓段階別の3枚


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左:べた張りが終わった直後


中:昨日、べた張りしたもの


右:まだべた張りしていない三枚蓑のもの






昨日べた張りしたものは、ノリが乾いて、ピンと紙が張って


下の蓑張りの紙の線が消えて平らになり、とてもきれいです。




これは、蓑張りのとき、ノリを上だけつけているからです。


ノリを下までつけると、ノリの分厚みがでて、線が出てしま


います。








↓何枚も紙を張り重ねているのに、フチの厚さは木の


厚さのまま。


最初の下地のとき、勾配をつけておいた為。

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↓触ってみると、おお~!


と声がでてしまうほど、しっかりしている。

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蓑張りの時は、ただ、紙を重ねただけって感じで


紙は、まぁそんなもんだよな、という程度。




それが、このごく薄いクワチリ紙を、ノリをつけて


張ったことで、まるで皮を触っているような、弾力が


あります! すごい!






相馬表具屋さんいわく、



『べた張りすることで、一体化されたからじゃないかな。


和紙は、10+10=20じゃなくて、もっと100くらいの


重ねると相乗効果がでるのがいいよね。』




和紙の力と、それを生かす職人の知恵、


素晴らしいですね。










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by takahashi-tategu | 2012-12-12 09:08 | 職人の仕事 | Comments(0)

今回の本襖では使っていませんが、昔からの方法は、


『生麩糊 (しょうふのり)』 を使うと、表具屋さんが教えてくれました。




生麩糊 (しょうふのり)とは、障子や襖を張る時の、ノリの一種です。



相馬表具屋さんいわく・・・



『作業する時は、このノリくっつくのかな?と思うくらいサラサラだけど、


乾くと、すごく良くつくんだよね。


急ぎの仕事の時は、生麩糊 使うと間違いないね。』  




生麩糊 (しょうふのり)とは、


小麦粉からグルテンをとりのぞいたもの


お麩をつくるときの残ったもの、です。




お豆腐でいうと、オカラのような


いらない絞りカスみたいなものだそうです。





以前、化学物質過敏症のお客様のお宅で、普通のボンドも


駄目だということで、襖と障子には、生麩糊を使い、


建具の接着には、お米を木の棒でつぶして、米ノリを作って使いました。


その米ノリのことを、 『そくい』  と呼んでいます。




しょうふのりも、売っていなくて、それぞれ表具屋さんの家で


煮てつくるそうです。


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by takahashi-tategu | 2012-12-04 18:08 | 職人の仕事 | Comments(0)

本襖の下張りに、昔の古い本、


古帳(こちょう)を張ることもあります。




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古い紙って、すごく強いんですよ。


ひっぱってもきれないで、のびる感じです。



本襖の下地の上等な仕上げに使います。



本はばらして、紙をつなぎあわせて、


1へたの巻物にしてから張っていきます。





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by takahashi-tategu | 2012-12-04 17:49 | 職人の仕事 | Comments(0)

本襖 ⑥  内山和紙

今回の本襖では、使っていませんが、


茶室などに、下張りに内山和紙を使うことがあります。




内山和紙とは、長野の内山村で作られている和紙です。


こちらをどうぞ


http://www.uchiyama-gami.jp/history.html




日本全国、和紙を作っているところは沢山ありますが、


表具屋さんの、だんとつ一押しがこの内山和紙です。



*ノリをつけても、ひっぱりが殆どない


*丈夫


*薄くてとてもきれい



・・・と、仕事をしていて、他の和紙と全然違うのだそうです。




はじめて、内山和紙を張った障子を、そこのお宅にたてて、


光がさしたとき、紙が水で浸したように透き通って、とても


きれいで、びっくりした事を良く覚えています。




内山和紙は、新しいものより、年月が経つと、紫外線で白さが


増して美しくなるのも魅力です。





↓この写真は、内山和紙を障子に使っていて、古くなったものを


はいで、本襖の下地に使ったものです。



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内山反古紙 と言っています。


内山和紙そのものもが、とても強い紙ですが、古くなると


さらに強度が増すのだそうです。





強度が必要な本襖の下地に、古くなって強さを増した内山和紙


を張るとは、なんとも日本人らしくて、格好良いですね。










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by takahashi-tategu | 2012-12-04 17:07 | 職人の仕事 | Comments(0)

骨縛がおわり、完全に乾いたら、次は



『蓑張(みのばり)』です。

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丈の短い薄手の和紙(石州紙)を張り重ねます。



今回は、3枚張り重ねる 『三偏蓑(さんへんみの)』 


という上等な襖の方法です。




上と縦だけノリをつけて、下をとじてしまわないで、


ペラペラ動く状態で、重ねていきます。



これで、空気を含んだフンワリした本襖の醍醐味である


あの優しい質感がでます。





↓こうやって、1/3づつ、づらしながら張り重ねていきます。


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この仕事をしている時、相馬表具屋さんから


大変興味深い話を聞きました。




『本襖の本格的なやり方は、清水園の庭を作った


田中泰阿弥 さんから、うちの死んだ親父が教わった。



もともと、やり方は知っていたけど、ちゃんと指示してくれた


のは田中泰阿弥さんだけだった、と言っていたよ。



庭師の仕事だったけど、庭は庭だけじゃなくて、部屋の中


まで含めて全体で庭だからと、茶室にもとても詳しかった


そうだよ。』





この田中泰阿弥 さんというお名前、最近、新発田の冊子


街角こんぱすで、吉原写真館さんが紹介していたばかり


だったので、感慨もひとしおでした。




吉原さんの文章を見ると、昭和32年に清水園の庭が完成した


そうです。まだ最近といえば、最近。



その教えを、相馬表具屋さんで私が聞いている・・・・とても感動


しました。





清水園と、田中泰阿弥さんについてはこちらをどうぞ。



http://hoppou-bunka.com/shimizuen/taiami.html#hajimeni




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by takahashi-tategu | 2012-12-04 16:42 | 職人の仕事 | Comments(2)

本襖④  骨縛

次の工程は



『骨縛 (ほねしばり)』  です。



骨の強度を増す為に、骨にノリをつけて、


強い紙を張ります。



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by takahashi-tategu | 2012-12-03 20:40 | 職人の仕事 | Comments(2)

本襖③  捨てノリ

骨に、濃いめのノリをつけます。




この作業を、『捨てノリ』 といいます。



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トントントンと、ハケを置くようにしてノリを


つけていきます。


縦と横の桟が交差するところは、ノリがたまらない


ようにハケを浮かします。




ノリを完全に乾かして膜をつくります。




ノリの膜を作ることで、その後のノリのつきを良くし


本には書いていませんが、木のアクをとめる役目も


しているとの事です。


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by takahashi-tategu | 2012-12-03 20:29 | 職人の仕事 | Comments(0)