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本襖②  中子(なかご)


本襖の紙を張る 『中子(なかご)』 について紹介します。




↓下の写真の一見障子の骨のように見えるのが 『中子』です。



本襖②  中子(なかご)_f0375580_17090660.jpg




本襖の中子には、障子と違う特徴が4つあります。





① 桟が、ノリで固定していなく、手で外れるくらいゆるく


組んである。



このゆるさを、『カタカタに組む』 と言っています。



これは、本襖は、紙を何枚も重ねて張るので、


紙がひっぱる力が強く、骨をきっちり固定すると、一緒に骨も


ひっぱられて襖全体が反ってしまうのを防ぐためです。



カタカタに組むことで、力が分散されます。 








② 桟が、縦と横、互い違いに組んであります。



これは、関東の方の障子では見られる事がありますが、


『ねじり組み』 です。



これも、紙のひっぱりを緩和する為です。








③ 隅々四方に 『チイ』 をたてる



『チイ』 とは、入隅(いりずみ)の事で、 ちょびっとだけ、出して


組みます。 



隅木といって、斜めに木を入れるやり方もありますが、当社では


チイをたてます。


『隅々に紙にシワが寄るのを防ぐ』 為に入れます。



襖で一番みっともないのは、隅々にシワが寄ること。


ちょっと、チイを入れることで改善されます。








④ 左右 『転ばし』 をつけます。



『転ばし』 とは傾斜のことです。


どのくらいの傾斜かというと、5厘弱・・・1.5mm弱です。



これは、紙を何枚も張りはさねると、左右、桟のあるところが


盛り上がってくるのを防ぐ為です。



写真では、 定規をあてて、 傾斜がついている所を私に


説明してくれています。



この傾斜は、猿頬面という45度より強い傾斜にします。


そうすると、紙を重ねて張っても平らになります。








引手のところに入っている板にも傾斜をつけるのですが、


その勾配について、表具屋さんとうちの社長が興味深い話を


してくれました。




傾斜を強くすることで、表具屋さんが張りやすく、仕事がしやすくなる


という話です。



傾斜をつければいい ということではなくて、 角度でその後の仕事も


しやすくなるし、仕上がりも平らに綺麗になる。





相馬表具屋さんいわく・・・・・



『高橋建具の障子は、張りやすいね。


紙じゃくりの深さがちょうどいい。



2鉋くらいじゃないかな。



これが、少し深いと、手で紙をなでた時につかないで、


紙がおきてしまう。


だから、ノリを濃くしてしまう。そうしないと、つかない。


ノリを濃くすると、紙からしみでて見栄がわるいし、紙を


はぐときも汚くなるからしたくない。




そもそも、紙じゃくりをする建具屋さんは少なくなったけど、


他の職人さんがやった障子で、深さが違うとこうも仕事が


変わるのかとわかったよ。



あと、もう1つ、紙じゃくりをする極かんなは、隅々まで届かない


から、隅々はノミでとっているんだね。


それが、他の職人さんだと、ノミでとる部分が深くへこんでいた。


だから、ああ、ノミでとっているんだと最近わかった。



ノミでとっているとわからせない、職人さんの腕ってすごいね。』



との事。








さらに、 その話を受けてうちの社長が・・・・・



『昔の職人は、他の職人さんの事も考えて仕事をしたよね。



例えば、大工さんは、鴨居と敷居が、時間とともに沈むとわかった


作り方をしている。


それなのに、建具屋が、極(きわ) 極(きわ)で、きっちり、その時だけ


綺麗に見えるように納めたら、大工さんはいやだよね。




大工さんが、使う人が、長くスムーズに使えるように工夫しているのだから、


建具屋も、ある程度 逃げ を作って建て付けをするのが良いと思う。』



との事。






さらに、続けて・・・


『逃げ』っていえば、 どのくらいの『逃げ』が良いか?とわかると


きれいな仕事ができるよね。



雪見障子のバネが入る深さ。


ゆるいとすぐ落ちちゃうし、なかなか微妙だけど、あれは1回で決めないと


ドツボにはまって、何回もちょすと仕上がりが汚くなっちゃう。


(ちょすは、いじるの意味です)





など・・・・
本襖を作ることになり、予期せず沢山話が聞けて、とても楽しい(*^。^*)




職人と職人の会話ってすごく面白いんです。


引き続きレポートしますね。


by takahashi-tategu | 2012-12-03 19:21 | 職人の仕事 | Comments(0)